1: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:32:15.45 ID:NnF75pbe0

律子「ただいま戻りましたー」

P「おう、お疲れさん」

亜美「兄ちゃん、たっだいまー」

P「おかえり……って、こら!くっつくな、暑い!」

亜美「んっふっふ~、体が熱くなっちゃう?」ムギュー

P「10年早い。ていうかマジ暑い」

亜美「だったら、もっと暑くしてあげるもんね!」

亜美「ほらほら、いおりんとあずさお姉ちゃんも一緒に!」ムギュー

あずさ「あらあら、どうしましょう?」

伊織「やるか!」

律子「こら、亜美!プロデューサー殿の邪魔しない!」

亜美「うぁ、ごめんなさ~い」

律子「まったく……」

P「はは、いつも大変だな」

律子「笑い事じゃないですよ……」

P「ちょうどよかった。律子、ちょっと話がある」

律子「はい?」




2: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:34:05.86 ID:NnF75pbe0

律子「夏フェス……ですか?」

P「そう、フジ○ック・フェスティバルとかあるだろ。そのガールズアイドル版だな」

律子「うちだけのイベントじゃない、と?」

P「うん。大手から、うちより小さいとこまで……ほとんどの事務所に声がかかってるそうだ」

律子「そんな大きなプロジェクトが!?」

P「ああ。俺も今日知ったけど、よく今まで秘匿できてたよな」

律子「ほんとに……」

P「社長も一枚かんでるらしい」

律子「人脈はやけに豊富ですからねぇ、あの人」

P「ま、俺としては断る理由もないし、参加するつもりだ」

律子「よそ様のファンを取り込む、またとないチャンスですからね」

P「うん。今のあいつらなら、それができるからな」

律子「ええ、真っ向勝負なら、どこにも負けませんよ」

律子「で、うちがもらえる時間は?」

P「まだわからないが……30分前後が妥当だろうな」

律子「でしょうね」

P「少ない時間での総力戦だ。できれば765プロオールスターズでいきたい」

律子「異存ありません。それがベストでしょう」

P「よし、決まりだ」

律子「はい!」



3: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:36:08.38 ID:NnF75pbe0

竜宮小町で勝負してみたいという気持ちは、もちろんある。

どれほどの大舞台で、有名無名のどんなアイドルが相手でも、絶対に負けないという自負もある。


でも、私たちだけが765プロを支えているなんて、自惚れるつもりはない。

追われる立場だからこそ、プロデューサー殿が率いる9人のアイドルの勢いはひしひしと感じる。


私は、その勢いで竜宮小町をさらに押し上げたい。

彼は、竜宮小町の知名度で自分のアイドルたちを引っ張り上げたい。

ただの馴れ合いにはならない彼との仕事は……やっぱり楽しい。


と同時に、少しばかり惜しいとも思う。

それほどの大舞台、できることなら彼と正々堂々勝負してみたかった。


いつからだろう、彼に勝ちたいと思うようになったのは……。



4: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:38:06.57 ID:NnF75pbe0

P「もうひとつある」

律子「?」

P「フェスの顔になるメインアイドルを、一人選出するそうだ」

律子「メインアイドル?」

P「まず、単独でライブの枠がもらえる……たぶんオープニングやトリもだろうな」

P「さらに、フェスのテーマソングや、各種媒体への広告塔も担当する」

律子「それは……」

P「それだけじゃない」

P「メインアイドルの担当プロデューサーは、他のアイドルも含めたフェス全体の運営に参加できる」

律子「……!」

P「うちで獲りたくないか?」

律子「もちろんです!ものすごいチャンスですよ!」


他事務所の同業者や、同じ芸能音楽畑だけじゃない。

こういう大きなイベントには、私たちが普段縁の薄い世界の人たちも多く関わっている。

運営に携わることで、主催者やスポンサーの有力者と面識ができるメリットは計り知れない。


アイドル本人にとっても、事務所にとっても。

プロデューサー……自分自身にとっても。


独立して、自分の事務所を持つ。

どれほど笑われようと、私の夢は絵空事なんかじゃない。

こうして、チャンスは必ず巡ってくるんだから。



5: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:40:37.99 ID:NnF75pbe0

P「その選考のためのオーディションに、うちから二人エントリーできる」

律子「二人……」

P「大手なら、もっと多いかもしれないけどな」

律子「戦力の分散にならないのは、むしろ好都合ですよね」

P「同感だな。そこでだ」

律子「はい?」

P「俺の担当と律子の担当から一人ずつ、それぞれ代表者を選ぶ」

P「ってことでどうだ?」

律子「それは構いませんが……こちらは3人、そちらは9人ですよ?」

P「そうだな」

律子「プロデューサー殿がそれでいいのなら……」

P「勝ちに行くには一人で充分だ」

律子「言ってくれますね?」

P「ははは」

律子「ふふ」



6: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:42:32.07 ID:NnF75pbe0

律子「オーディションの会場や日時は?」

P「それはまだ……」

高木「やあ、君たち。ご苦労さま」

律子「社長、お疲れ様です」

P「お疲れ様です」

高木「その様子だと、もう話は聞いたかな?」

律子「はい!」

P「今まで隠してたなんて、社長も人が悪いですよ」

高木「私もいちおう運営に関わっているからね」

高木「君たちだけ贔屓するわけにもいかないんだよ」

P「ごもっともです。他と同じ条件で勝てばいいだけですから」

律子「その通りです」

高木「うむ、頼もしい限りだ」

高木「先ほど連絡があったが、オーディションは再来週の日曜日、6月23日に決まった」

律子「6月23日……」

P「会場は?」

高木「聞いていない。まだ未定ということだろう」

律子「未定ですか」

P「……」



7: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:44:56.21 ID:NnF75pbe0

P「ところで社長」

高木「ん?」

P「フェス本番の会場は、どの程度設営が進んでいるかわかりますか?」

高木「ステージは概ね組みあがっているそうだが、全体はまだまだだろうね」

P「なるほど、ありがとうございます」

律子「?」

高木「君たちには期待しているよ。フェスの成功のためにも頑張ってくれ」

律子「はい!」

P「任せてください」

高木「では、私はまたちょっと出てくる」

P「はい、いってらっしゃい」

律子「お気を付けて」

 ガチャ…バタン

P「さて……」

律子「プロデューサー殿」

P「なんだ?」

律子「本番の会場がどうなっているか、気になりますか?」

P「ん?ああ、そうだな」

P「運営に関わるかもしれないからな」

律子「気が早いですね」

P「そうだな、ははは」



8: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:47:28.81 ID:NnF75pbe0

運営に関わる?

だからこそ、今はオーディションでしょ?


この人、もう勝った気でいるのかしら……。

私まで見下されてるのは、さすがに不愉快ね。


P「明日、ちょうど全員が揃う」

P「そこで代表者を発表しよう」

律子「わかりました」


明後日のことを考えて、明日のことを疎かにするなんて、あなたらしくもない。

思い上がった人には、少しばかり痛い目を見てもらわないと。


オーディションは6月23日。私の20歳の誕生日。

あなたに勝った、一生の記念日にしてあげます。



9: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:51:18.38 ID:NnF75pbe0

 ── 翌日 765プロ事務所 ──


P「夏フェスに関しては以上だ」

P「会場は海辺の野外ステージだから、日焼け対策は怠らないように」

一同「はい!」

伊織「で、オーディションにエントリーする代表は決まってるんでしょうね?」

律子「ええ。プロデューサー殿と私から一人ずつ」

律子「私のほうは、伊織にお願いするわ」

伊織「まあ当然よね」

亜美「ちぇ~。面白そうだから、亜美も出たかったのになぁ」

あずさ「うふふ。二人で伊織ちゃんを応援しましょ?」

亜美「うん!負けたら承知しないかんね!」

伊織「誰に言ってるの?この伊織ちゃんが負けるわけないでしょ」


そう、伊織なら勝てる。

誰よりも伊織の実力を知る私だからこそ、この自信は揺るがない。


あなたはどうしますか、プロデューサー殿?



10: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:53:43.78 ID:NnF75pbe0

春香「誰かな~?プロデューサーさんが選ぶのは誰かな~?」ソワソワ

千早「ふふ……春香ったら、少しは落ち着きなさいよ」ソワソワ

美希「あはっ♪ハニーがミキ以外を選ぶなんてありえないの」ソワソワ


気分屋で波があるけど、紛れもなく天才の美希。

9人の中で、最も『アイドル』を体現している春香。

やはり、この二人のどちらか?


歌という絶対の武器を持つ千早も、可能性としてはあるけど……。

夏フェスというイベントの性質上、考えにくい。


オーディションにピークを合わせてくる前提なら、相手としては美希が一番厄介。

もっとも……それでも伊織なら遅れをとることはないけど。



11: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:56:45.62 ID:NnF75pbe0

P「俺のほうは……」

一同「……」

P「響、お前に任せる」

美希「え?」

春香「わた……あれ?」

千早「……」

響「じ、自分!?」

P「そうだ」

響「ま、まあ自分完璧だからな!別に驚くようなことじゃないけど!」

P「そうだな」

響「ほんとに自分?」

P「ああ、頼んだぞ響」

響「うん、わかった!」


響か……全く予想してなかったわけじゃない。

夏フェスというイメージとの相性の良さから、充分に考えられたことだ。


得意のダンスパフォーマンスは、うちでは真と並ぶ二枚看板だし、歌唱力も申し分ないレベルにある。

パフォーマーとしての実力なら、うちでも一、二を争う存在だろう。


ただ、今回はあくまで『アイドル』としての勝負になる、と私は踏んでいる。

その点で、美希や春香ほどの怖さややりにくさは感じない。


彼の考えが読めないから、油断するつもりはないけど……。



12: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/22(土) 23:59:13.99 ID:NnF75pbe0

春香「お、おめでとう響ちゃん!私も応援するよ!」

響「う、うん……ありがと春香」

千早「私たちの分まで頑張ってね、我那覇さん」ニコッ

響「う……目が笑ってないぞ、千早」

美希「響にネトラレタ……響にネトラレタ……響に」ブツブツ

響「ね、ねとられ?」

貴音「面妖な……」

響「貴音は応援してくれるよね?」

貴音「当たり前です。響はわたくしたちの代表なのですから」

貴音「もっと胸を張って、堂々としていればいいのです」

響「そうだよな!うん!」

P「それでな、響」

響「ん?」

P「今までどおりのスケジュールに加えて、オーディションの準備もしてもらうことになる」

P「かなりきつくなると思うが……できるな?」

響「うん!やるよ!」

P「よし、いい返事だ」



13: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:01:21.51 ID:QcXBHpR+0

響「な、なんたってプロデューサーが選んでくれたんだからな!」

響「自分を……///」

春千美「「「負けたら許さないから!」」」

響「ひぃっ!?」

伊織「しっかりしなさいよ。私と勝負するんでしょ」

響「う、うん。いい勝負にしような!」

伊織「ま、勝つのは私だけど」

P「そう簡単には負けてやらないさ。なあ、響?」

響「もちろん!」


ほんと、なにを考えてるのかわからない人。

そのくせ、いつの間にか私の一歩前を歩いてた人。

認めるのは悔しいけど……彼は強い。

強がってるだけの私とは違う。


でも、それがどうしたの?

私は、彼に絶対勝てない?


そんなこと、あるもんか!



14: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:05:00.10 ID:QcXBHpR+0

 ── 数日後・夕方 765プロ事務所 ──


響「ふあ~……疲れたぞ……」

伊織「ただいま……戻ったわ……」

P「おう、お疲れさん」

響「もうダメ……休ませて……」ヘタッ

伊織「ふ、ふん!そんなザマで…スゥー…ハァー…この伊織ちゃんに…ゼェー…ハァー…勝とうなんて……」

律子「いいから、伊織もちゃんと休みなさい」

伊織「……そうするわ」ヘタッ

律子「どうせ、お互いに意地を張り合ってたんでしょ」

響「べ、別に!」

伊織「ふんっ!」

小鳥「ひびいお……意地っ張りどうし……イイ!」

律子「わざわざ同じタイミングでレッスンを入れたのは、なにかの作戦ですか?」

P「おいおい、たまたまスケジュールが被っただけだろ」

律子「ふ~ん……?」

P「どんなやつだと思われてるんだよ、俺は」

小鳥「それはですね!」

律子「!?」


な、なに?なにを言うつもり?

そういえば、小鳥さんには以前ちょっとだけ口を滑らせたことが……。

秋月律子、一生の不覚……!!



15: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:06:54.45 ID:QcXBHpR+0

小鳥「実は、律子さんは……」

響「おお!?」

伊織「じ、実は?」

P「……」

律子「オホンッ!」

小鳥「!?」ビクッ

律子「小鳥さん……。頼んでおいた書類はもうできてますか……?」

小鳥「い、いえ……まだ」

律子「まだ……?遅くとも今日中にとお願いしましたよね……?」

小鳥「は、はい!今すぐ終わらせます!」

響「えー?実はなんなのさー」

伊織「そうよ、気になるじゃないの」

律子「なんでもない!なんでもないから!」

P「ふ~ん」

律子「……///」


じ、ジロジロ見るなぁ!

見ないでくださいよ、もう……///



16: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:09:13.59 ID:QcXBHpR+0

響「それじゃ、うちのみんなのゴハン作らなきゃならないから、自分そろそろ帰るぞ」

P「しっかり休んで、疲れをとっておいてくれよ」

響「うん、わかってる!じゃ、お疲れさまー!」

P「おう、お疲れー」

律伊小「「「お疲れさまー」」」

 ガチャ…バタン

P「今日はもう予定もないし、珍しく早く帰れそうだな」

律子「そうですね。私のほうも……」

P「じゃあ、久しぶりに一緒にメシでも食いに行くか?」

律子「……」

伊織「律子」

律子「え……え?私ですか?」

P「最近忙しくて、なかなかそんな機会もなかっただろ?」

律子「そ、そうですね。そういうことなら……」

小鳥「ご一緒します!」

P「律子がいるから、酒は無しですよ」

小鳥「えー?」

律子「そうですよ!もう酔っぱらいの世話なんてゴメンです!」

小鳥「ちょっとだけ!ちょっとだけですから!」

律子「ダメ!小鳥さんが飲み出すと、プロデューサー殿まで釣られて飲み出すんだから」

P「お、俺はいつも節度を守って……」

律子「はあ?」

P「ごめんなさい……」



17: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:11:43.53 ID:QcXBHpR+0

伊織「まったく……律子もつくづく損な役回りが好きね」

律子「は?」

伊織「なに?自覚ないの?」

律子「いや、伊織には言われたくないんだけど?」

伊織「は?」

律子「好き好んで、美希や亜美真美の面倒を見てくれてるじゃない」

伊織「私はあいつらの保護者でもお目付け役でもないんだけど?」

律子「あら、自覚なかったんだ」

伊織「そもそも、保護者のあんたたちが頼りないから、私の負担が増えるのよ」

律子「お願いしなくても率先して面倒見てくれるなんて、ありがたい限りね」

小鳥「ふふ」

P「ははは」

律子「なんですか?二人してニヤニヤして」

伊織「気持ち悪いわね」

小鳥「だってねえ?仲のいい姉妹みたいで」

P「うん、見てて微笑ましい」

律伊「「はあ!?」」



18: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:13:33.73 ID:QcXBHpR+0

伊織「律子が姉で?」

律子「伊織が妹?」

伊織「……」

律子「……」

伊織「こんな小姑みたいな口うるさい姉なんていらないわ」

律子「こっちこそ、こんな生意気で可愛げのない妹なんてお断りよ」

伊織「……」

律子「……」

律伊「「なんだと?」」

小鳥「ぷっ、ふふ……あはは」

P「あはははは」

伊織「笑うな!」

律子「なんなんですか、もう!」

P「いや、すまんすまん」

小鳥「今のやり取り、録画しておくんだったわ」

小鳥「二人とも意地っ張りで可愛い♪」

律伊「「ふんっ!」」



19: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:17:23.86 ID:QcXBHpR+0

小鳥「あ!私、今日は残業しないと!」

律子「なんですか、急に?」

小鳥「残念だわ~、お二人とご一緒できないなんて」

律子「は?」

小鳥「ふふ……いいものを見せてもらったから、お姉さんからご褒美です」ヒソヒソ

律子「いや、なにを……」

小鳥「久しぶりなんだから、プロデューサーさんと二人だけで、ね?」ヒソヒソ

律子「な……!?」

P「?」

律子「わ、私は別にそんな……///」

伊織「へぇ……そういうこと」

律子「伊織まで……///」

小鳥「まあまあ、伊織さん。野暮は言いっこなしですよ」

伊織「それもそうね。にひひ♪」

律子「うぅ……///」

P「?」


この二人は……!覚えてなさいよ!


さっきまでなんでもなかったのに……。

彼と二人っきりだと思うと……変に意識しちゃう……。

気づかれなければいいけど……。



20: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:20:06.83 ID:QcXBHpR+0

 ── 同日・夜 帰路 ──


律子「あの……ごちそうさまでした」

P「律子が同伴してくれるなら、安いもんだよ」

律子「もう、またそういうこと……」

P「結構、本気で言ってるんだけどな」

律子「そう、ですか……///」


ダメだわ……絶対バレてる……。

食事中もドキドキしっぱなしで……ああもう、恥ずかしい!


でも、意識するななんて言われても無理。

今だって……。


P「オーディションは、律子の誕生日だったな」

律子「え、ええ。だからって、手加減なんかしないでくださいよ?」

P「響は手加減できるほど器用じゃない」

律子「いいんですか、そんなこと言っちゃって」

P「なんでも全力で取り組むのが、あいつの強さだろ」

律子「ふふ、そうですね」

P「ああ」

律子「……」



21: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:22:22.32 ID:QcXBHpR+0

P「オーディション……勝負しないか」

律子「勝負?」

P「どちらも優勝できなければドロー」

P「どちらか優勝したら……負けたほうが、勝ったほうの言うことをひとつ聞く」

律子「えぇ?」

P「どうだ?」

律子「な、なにかやましいことを……」

P「ないない。どうしても嫌なら拒否できるってことで」

律子「それなら、まあ……」

P「OK?」

律子「ええ、受けますよ」

P「よし、勝負だな」

律子「望むところです」



22: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:24:51.54 ID:QcXBHpR+0

P「お、ちょうど着いたな」

律子「あ……わざわざ送ってもらって、ありがとうございました」

P「どういたしまして。当日、楽しみにしてるよ」

律子「負けませんよ?」

P「お手柔らかにな」

律子「お断りします」

P「はは、それでこそ律子だ」

律子「ふふ」

P「それじゃ、おやすみ」

律子「はい、おやすみなさい」


なにを企んでるのかわからないけど……。

まさか、小鳥さんの本みたいなことを!?

いやいや、そのへんは信用しても……大丈夫よね、たぶん。


うん、勝てばいいだけ。

勝つのは私と伊織!

勝って、もう二度とふざけた態度が取れないようにしてあげます。



23: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:27:04.74 ID:QcXBHpR+0

 ── オーディション当日 会場 ──


オーディションの会場は、なんと前々日まで非公開。

審査に公正を期すため、ということだけど。


そこは……本番と同じ舞台。


組みあがったばかりの野外ステージは、最低限の音響機材以外、余計なものがない。

ステージを目一杯使って動き回れる。

加えて、海からの潮風。真夏のような暑さ。

太陽……!


やられた。ここは響のステージだ。

本番と同じステージを、設営段階でオーディションに使うなんて。


プロデューサー殿は知ってた?

まさか、そんなわけない。


設営状況を社長に確認していたのは、そういうことだったんだろう。

主催者側が求めるアイドル像。その選考にふさわしい舞台はどこか?

その確信を得るために。


気が早い?バカな。

彼は私より、ほんの一歩先を見据えていただけだ。

今日、この日のことを。



24: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:28:43.95 ID:QcXBHpR+0

もっとも、気づいたところで今さらだ。

なにより、どんな条件だろうとこれだけは変わらない。

誰より信頼する、水瀬伊織で勝負するだけだ。


伊織「なにシケた顔してるのよ」

律子「……なんでもないわ」

伊織「ステージが野外だろうが屋内だろうが、関係ない」

律子「そうね」

伊織「今日はあんたの誕生日でしょ?」

律子「え?ええ」

伊織「相手が誰だろうと負けてやるもんですか」

律子「伊織……」

伊織「ぼーっとしてないで、なにか言うことあるんじゃない?」

律子「ん!そうよ、勝つのは私たち!」

伊織「当然よ。いってくるわ!」

律子「ええ、いってらっしゃい!」


頼んだわ、伊織!



25: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:30:47.53 ID:QcXBHpR+0

 ── オーディション 開始 ──


伊織の選曲は……本人と私が迷わず選んだ『DIAMOND』。

奇をてらう必要はない。

伊織と私の、持てるすべてを全力でぶつけるだけ。


残念ながら、私はアイドルとしての才能には恵まれなかった。

でも、伊織は違う。

アイドルになるために生まれてきた、選ばれた子だ。


だって……誰よりも近くであの子を見てきた私が、今もこうして魂を揺さぶられる……!

これがアイドル水瀬伊織。


うん!やれることは全てやりきった。

あとは信じて待つのみ。


伊織に栄冠が輝く瞬間を。



26: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:32:47.44 ID:QcXBHpR+0

伊織の二人あとに響。

選曲は『神SUMMER!!』。

響の持ち歌ではないけど、まさにこの日のためにあるような歌。


響のために用意されたようなステージに、これ以上ない選曲。

今、舞台袖で瞬きもぜず響を見つめる彼が、ほんの小さな情報の断片から導き出した解答だ。


ほんとに、すごい人……。

でも……だからこそ勝ちたい。


私はあの人に勝ちたい……!



27: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:34:20.30 ID:QcXBHpR+0

そして───



勝負は本当に僅差だったと思う。

少なくとも私には甲乙なんてつけられなかった。


でも、結果は結果。


オーディションで優勝したのは響。

フェスのメインアイドルを務めるのも響。

それをプロデュースするのはプロデューサー殿。



28: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:35:48.41 ID:QcXBHpR+0

伊織「負けちゃった……」

伊織「勝たなきゃ、いけなかったのに……」

律子「伊織……」

伊織「律子の誕生日……うぇ……ひっ、うぅ……」ポロポロ

律子「ううん……いいのよ伊織」

伊織「よくないわよ、バカ!」

伊織「負けちゃったんだから怒りなさいよ!」

律子「……」フルフル

伊織「なんで……なんで……」

律子「最高のバースデープレゼントだったわ」

伊織「りつっ……バカ!バカ!」

律子「うん、ありがとう伊織」

 ギュッ

伊織「うぁ……うあぁぁぁぁん……!」ポロポロ


あなたは、私なんかには出来すぎた『妹』だわ。

素敵なプレゼントをありがとう、伊織……。



29: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:38:19.06 ID:QcXBHpR+0

泣き止んでからも、なかなか立ち直れなかったみたいだけど……。

亜美とあずささんが駆けつけてくれて、伊織もなんとか落ち着いたみたい。

私がなんとかしなきゃいけないのに、情けない……。


二人の前では、「今日は調子が悪かっただけ」なんて強がってたけど。

亜美とあずささんは、そんなのお見通しよね。


私はまだ事後処理があるから、しばらくはここに居残り。

3人は先に事務所に戻った。


ん?道に迷ったりしないわよね?

いつもなら、伊織に任せておけば心配ないんだけど……。

今日は亜美が頼りよ。お願いね!



30: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:40:47.81 ID:QcXBHpR+0

P「律子、お疲れ」

律子「お疲れさまでした……」


ひとつだけ強がりを言わせてもらえば……。

今日の伊織なら、美希でも春香でも千早でも、他の誰が相手でもきっと勝てた。

ただ一人、響でさえなければ……。


律子「やっぱり、あなたには勝てませんね……」

P「そうでもないさ。こっちも賭けだったし」

P「このステージまでは確信があった。が、天気まではさすがにどうすることもできないからな」

律子「天気が悪かったら、伊織の勝ちでしたか?」

P「さあね。響はそんなに弱くない」

律子「そうですね……」


仮に運の要素があったとしても、それを含めて勝ったのがプロデューサー殿。

私に運を引き寄せられる実力がなかったから、負けただけのこと。

伊織と響の差じゃない。

私とプロデューサー殿の差で負けただけ。


……。

ごめんね、伊織……。



31: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:42:51.19 ID:QcXBHpR+0

律子「うぅ……ひぐっ……うぁ……」ポロポロ

P「……」

律子「ごめっ……ごめん、伊織……」ポロポロ

P「そういうの、なにより伊織が嫌がるんじゃないか?」

律子「わがっ……わかって……!」


言われなくてもわかってますよ!

伊織のことで、知ったふうなこと言わないでください!


P「泣き虫だな」


うっさいバカ!

誰のせいだと思ってるんですか!

だいたい、なんで伊織の前じゃ泣けないのに、この人の前だと……。

なんか無性に腹立つ!


律子「い……いけませんか!?」グシッ

P「いいや。強がりのくせに、すぐくよくよするのも律子の可愛いところだからな」

律子「か、かわ……!?」


な、なんなのよ、もう!

褒めてるんですか!?バカにしてるんですか!?



32: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:44:44.03 ID:QcXBHpR+0

P「よし、ちょうど定時だな」

律子「へ?」

P「仕事はここまで。ここから先はプライベートだ」

律子「は、はあ?」

P「20歳の誕生日おめでとう、律子」

律子「あ、はい……ありがとうございます」

P「今からちょっと付き合ってくれ」

律子「え?で、でも、今日は事務所で……」

P「うん、みんなで律子のバースデーパーティだけど……」

P「その前に、ちょっとな」

律子「?」

P「すぐそこの臨海公園だから。ほら、行くぞ」

律子「えぇ?ちょっ……わかりましたよ、もう!」


なんなの、この人。

ほんと、わけわからない。



33: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:46:23.31 ID:QcXBHpR+0

 ── 臨海公園内 観覧車上 ──


律子「付き合うって、観覧車ですか?」

P「ああ、ここの観覧車は一度乗ってみたかったんだ」

律子「子供ですか……」

P「景色を楽しむのに、大人も子供もないだろ」

P「ほら、夜景みたいにとはいかないが、夕焼けも悪くないだろ」

律子「それは、まあ……」

律子「でも、私なんかと一緒で……」

P「おいおい律子さん。それはムードが台無しだ」

律子「どこにムードなんてあるんですか」

P「なに言ってるんだ。向こうのゴンドラを見てみろよ」

律子「え?……あ」


あんなところで……な、ナニを!?

き、キスだけじゃないわよね?

ここからじゃ見えないけど、他にも……///



34: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:47:52.07 ID:QcXBHpR+0

もうやだ!ふざけんな、このバカ!

見なかった!私はなにも見なかった!


違う話題!ほら、なにか。


律子「今日は!オーディションの優勝、おめでとうございました!」

P「ん、ありがとう。勝ったのは俺じゃなく響だけどな」


いいえ、あなたですよ。

負けたのは私。

ふんっ!


P「約束は覚えてるか?」

律子「約束?……あ」


負けたほうが、勝ったほうの言うことを聞く、って。

まさか、観覧車に連れ込んだのは……。



35: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:49:13.07 ID:QcXBHpR+0

無理!絶対無理!

全然心の準備なんて出来てないし!


え?それって、心の準備が出来たら……?

……ないない!


だいたい、こういうときの心の準備なんて、どうすればできるものなのよ。

私にわかるかけないでしょ。


律子「できません!」

P「は?」

律子「さっきの人たちみたいなことなんて、私にはできません!」

P「……」

律子「最低ですよ、このセクハラプロデューサー!」



36: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:50:23.91 ID:QcXBHpR+0

P「待て」

律子「なんですか?言い訳なら聞きませんよ」

P「違う違う。なにかひどい勘違いをしてないか?」

律子「勘違い!?勘違いって……え?」

P「少なくとも、律子が考えてるようなことをするつもりはない」

律子「は?……あ、いや」

律子「そうですよね……」


穴掘って埋まりたい……。

あ、ゴンドラだから雪歩でも無理か。

……。

なに言ってるのよ、私……。



37: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:51:35.39 ID:QcXBHpR+0

P「ふーん。俺って、律子からそんなふうに思われてたんだな」

律子「ちがっ!その……」

P「んん?」

律子「う……」

律子「ごめんなさい……」

P「うん、よくできました」


なによ、子供扱いして!

そもそも、先に誤解を招くようなことをしたのは、あなたですからね。


この人と、あんなこと……。

……///



38: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:53:05.84 ID:QcXBHpR+0

P「なに赤くなってるんだ?」

律子「な、なんでもありません///」

P「?」

律子「それで!私になにをやらせるつもりですか?」

P「ああ、そうだな」


なに?急に真顔になって。

そんなに……見ないでください。


P「今から俺が言うことに、必ず答えてほしい」

律子「え?」

P「YESでもNOでも、ごまかさずに必ずな」

律子「はあ……よくわかりませんが、私が答えられることなら」

P「じゃあ、聞いてくれ」

律子「はい」

P「俺は律子が好きだ」

律子「は?」

P「……」

律子「え?」



39: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:55:18.74 ID:QcXBHpR+0

な、なんだかおかしな言葉が聞こえたけど……。

負けたせいで、気が動転してるだけよね!

うん!気のせい気のせい!


P「気のせいじゃないぞ」

律子「ふえ!?」


やだ、声に出てた?


律子「だ、だったら、からかってるんですか?」

P「からかってるわけじゃないし、こんなこと冗談じゃ言わない」

P「律子が好きだ」

律子「う……ぁ……」

P「同じプロデューサーとしてだけじゃなく……」

律子「は、はい」

P「うん、まああれだ……」

P「恋人として、俺と付き合ってほしい」

律子「あ……ああ、あの……///」



40: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:57:39.03 ID:QcXBHpR+0

うん、聞き間違いでもなんでもない。

この人は私が好き。

私と、恋人になりたい……///


律子「わ、私は……その……」


私に気持ち?

そんなの、今さらじゃない。


たった一言、この人に答えるだけでいい。

それだけで、ずっと言えなかった私の想いが……。


 ガコンッ

律子「え!?」

P「ん……そろそろ一周終わりだな」

律子「あ……」

P「今すぐじゃなくてもいいよ。でも、必ず答えてほしい」

律子「……」



41: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 00:59:08.78 ID:QcXBHpR+0

P「それじゃ、そろそろ事務所に……」

律子「あ、あの!」

P「ん?」

律子「もう一度、乗りませんか?」

P「観覧車に?……行列はだいぶ減ってるけど」

P「今からまた並ぶと、バースデーパーティに遅れるぞ?」

律子「約束ですから!その……」

律子「もう一周するあいだに、必ず答えますから……」

P「……」

律子「ダメ……ですか?」

P「いや、そういうことならお願いするよ」

律子「はい!」


どうすればいいのか、よくわからないけど……。

もう一周……心の準備をするには十分よね。

この人の想いと、私の想いに……。


頑張れ、私!



42: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 01:01:13.52 ID:QcXBHpR+0

 ── 同日夜 765プロ事務所 ──


亜美「遅いよ!りっちゃん、兄ちゃん!」

真美「主役が遅れてきてどうすんのさ!」

律子「え、ええ……ごめんなさい」

P「悪いな。イベントの運営のことで、色々と打ち合わせがあったんだ」

美希「ふ~ん……?」スンスン

P「なんだ、美希?」

美希「秘密の匂いがするの……」

P「!?」

律子「!?」


この子は……なんでこう無駄に勘がいいかな。


で、でも!まだ、みんなには内緒!

彼との……新しい約束。



43: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 01:02:35.49 ID:QcXBHpR+0

真「律子、顔が真っ赤だよ?」

雪歩「プロデューサーも挙動不審ですぅ……」

P「べ、別にキョドってなんか!なあ?」

律子「そそ、そうですよ!赤くなってなんか!ねえ?」

響「怪しい……」

貴音「面妖な……」

あずさ「あらあら……?」

千早「ほう……?」

やよい「うー……?」

P「……」

律子「……」

小鳥「律子さんの裏切り者!」

律子「なんでよ」

美希「あ!ハニーの首筋にキスマークが!」

律子「そ、そんなことまではしてません!」



44: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 01:04:14.68 ID:QcXBHpR+0

一同「……」

P「おい……」

律子「あ……」

春香「じゃあ、なにがあったんですか!?」

伊織「白状しなさいよ。にひひ♪」


ダーメ!

約束だから。


律子「内緒です、内緒!ね?」

P「ああ、内緒だ」

一同「えー!?」


いつか、胸を張ってみんなに言えるようになるまで……。

必ずあなたに勝ってみせますから!


覚悟してくださいね、ダーリン♪



おわり



46: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/23(日) 01:08:59.25 ID:QcXBHpR+0

りっちゃん、誕生日おめでとう!
書いてみたら意外と書きやすかったけど、ピヨちゃんほどはっちゃけられないのが辛い

タイトルは有名なキャラの有名なセリフから拝借したけど、特に意味なし

読んでくれたみんな、ありがとう
あとひとりふたり違うキャラを書いたら、またピヨちゃんのほうを書きます



47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 01:10:56.36 ID:acRIPPZto

乙でした
世界一可愛いりっちゃん誕生日おめでとう


48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 01:43:55.26 ID:KmAJJhWr0

りっちゃん誕生日おめでとう!
いやーやっぱりりっちゃんはカワイイな!


49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 02:42:32.73 ID:B7+myIMco

乙したー&HAPPY BIRTHDAYりっちゃん!!


50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 02:52:24.70 ID:hY3k62960

乙なの
りっちゃん可愛い!誕生日おめでとう


51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 03:53:49.77 ID:zFt1QGhMo

乙!

遅くなったけど、りっちゃん誕生日おめでとう


52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 06:09:44.72 ID:qo4Izzgn0

りっちゃん、お誕生日おめでとう
リッチャンハカワイイデスヨっと、生涯のパートナーとして支えて思いっきし甘やかしてあげたい女性だね


引用元: 律子「私はあの人に勝ちたい……!」