1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 20:44:50.04 ID:3X7azJ+i0
ぴんぽーん♪

「はいさい! プロデューサー、お見舞いに来たぞ!」

インターフォンに向かって元気に挨拶した響だったが、応答はない。

「……あれ? プロデューサー?」

ぴんぽーん♪

もう一度チャイムを鳴らすと、響のケータイが鳴った。

「はいさい! プロデューサーか?」

『……響。うちに来てるのお前か……?』






3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 20:48:29.96 ID:3X7azJ+i0
「そうだぞ!」

『そうか……。悪いけど、熱があって出られないんだ』

「知ってるぞ。だから自分、お見舞いに来たんだ!」

『………。いや、風邪がうつると、困るから、』

「だいじょうぶ、自分、風邪になんか負けないぞ! なんくるないさー」

通話しながら響はドアノブに手を掛けた。
鍵はかかっていない。

「とりあえず入るよプロデューサー。おじゃましまーす」

『おい……響……』




6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 20:54:01.02 ID:3X7azJ+i0
部屋の中は電気もついておらず薄暗い。

「プロデューサー? こっちか?」

通話を切って、響は部屋に上がった。

「響……」

「あ、プロデューサー!」

Pは敷かれた布団のうえで上体を起こしていた。
少し辛そうである。

「響、お前な……、こんなの寝とけば治るんだから、」

「自分、風邪薬買って来たぞ。すぐにおかゆ作ってあげるからな!」




9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 21:00:22.80 ID:3X7azJ+i0
「話を聞け……」

「プロデューサー無理はよくないぞ。疲れたらちょっと休憩しないとだめさー」

バックパックからスポーツ飲料を取り出す響。

「はい! とりあえず水分補給だぞ!」

「あぁ、ありがとう……いやそうじゃなくてだな……、だいたい響は今日オフだろ?」

「あっはは、そりゃそうさー! そうじゃなかったら仕事してるってば」

「笑いすぎだろ……せっかくの休みなんだから、もっと好きなこと、すればいいのに」

「? 自分、プロデューサーの看病に来てるんだけど」

「うん」




13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 21:06:18.24 ID:3X7azJ+i0
「好きなことしてるよ?」

響は首をかしげた。

「………。あぁ、うん……」

「プロデューサー、ワケわかんないぞ!」

「うん、もういい……」

「そうか! じゃあおかゆ作ってくるなー」

そう言いながら響はキッチンに向かった。
Pはスポーツ飲料をこくりと飲みながら、

(響が何を考えてるのかわからん……熱のせいか)




15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 21:13:45.16 ID:3X7azJ+i0
「うぎゃああっ!」

響が扉を開けた。

「プロデューサー、キッチン汚すぎさー!」

「あぁ……すまん」

「もーっちゃんと片付けないとだめだぞー」

ぷんすかしながら響が戻る。

(まったくもう……。でも、なんかこれ、彼女みたいじゃないか?)

ゴミをまとめながら響は頬を緩ませた。




21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 21:19:23.14 ID:3X7azJ+i0
「プロデューサー、梅干は食べられる?」

響がぴょこりと顔を出した。

「あー、うん」

寝転んだままPはうなずいた。

「ほんとに辛そうだなー。病院に入ったのか?」

エプロンで手を拭きながら響はPに近寄る。

「いってない……なんだその格好」

「え? エプロンだぞ! ゲロゲロキッチン!」

(いや違うけど……)




24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 21:24:22.04 ID:3X7azJ+i0
「料理するときにはエプロンだろ? なんかおかしいか?」

「いや……」

(そんな薄着だと裸エプロンにしか見えないんだが……)

「あははっ、ヘンなプロデューサーだな! それはそうと、熱はかっとこうよ」

「あぁ、体温計なら……」

起き上がろうとしたPの額に、響は自分の額をそっと当てた。

「!」

「うわっ熱い! こりゃけっこう高いんじゃないかー?」




28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 21:32:14.29 ID:3X7azJ+i0
「お、おい響……」

これ以上ないほど響の顔が近くにあった。
きらきらした海のような瞳。長い睫。整った鼻梁。柔らかそうな唇。
ふにゃっと無邪気に響は笑った。

「早くおかゆ食べて薬飲まなきゃな! プロデューサー!」

「………」

Pはぽてんと頭を枕に落とした。

「プロデューサー?」

「すまん……ちょっと寝る……」

「うん! じゃあおかゆできたら起こすからね!」




34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 21:39:45.26 ID:3X7azJ+i0
少しまどろんで、Pは目を覚ました。
カーテンから漏れる光は強くなっていて、時刻が昼に近づいたことを知らせていた。

(……熱は……)

枕元の体温計で測る。どうやらちょっとマシになったようだ。

「プロデューサー、起きたのか?」

「ああ」

「ちょうどよかったな! おかゆ、できたぞ」

ばたばたとテーブルを片付ける響。
それからキッチンから小さな土鍋を運んできた。すぐに取って返し、おわんやら何やらも持ってくる。

「ちゃんと土鍋があってびっくりしたさー」




36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 21:47:03.65 ID:3X7azJ+i0
「最初のころは、自炊もちゃんとしてたんだ。ただまぁ、最近は、な」

「わかるぞ! 自分も忙しくてみんなのご飯作れなかったときがあったからな」

響がおわんにおかゆをよそう。
いい匂いがして、Pは腹の虫を鳴かせた。

「ふふっ! やっぱりお腹すいてたんだな」

「熱のせいで昨晩からまともに喰えてないんだ」

「ちょっと待ってて、プロデューサー。できたてであっちあちだからなー」

そういって響はスプーンにすくったおかゆをふうふうと冷ました。

「はい、プロデューサー。あーん!」




44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 21:53:48.76 ID:3X7azJ+i0
「えっと……」

「どうしたんだ? 食べないと元気になれないぞ!」

「いや、自分で食べられるよ」

「そんな熱で何言ってるんだ? ほらほら美味しいよ!」

「うっ……!」

響に詰め寄られて、しぶしぶPは口を開いた。
おかゆを食べる。

「うん、美味しい。さすが響だな」

「でしょ! 自分、完璧だからなー」

嬉しそうに響は笑った。




46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 22:00:14.61 ID:3X7azJ+i0
そのあともPは響の手でおかゆを食べた。

「ごちそうさま、響。美味かったよ」

「えへへ」

くすぐったそうに響は照れ笑いを浮かべた。

「あっ、そうだ、薬飲まなきゃだぞ。プロデューサー」

響が風邪薬を取り出す。
そして土鍋等をキッチンに運んで、グラスに水を入れて持ってきた。

「はい! プロデューサー」

「おう、助かるよ」




53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 22:07:42.75 ID:3X7azJ+i0
薬を飲んでPはまた横になった。
TVをつけ、ケータイでメールをチェックする。

「~~♪」

響は鼻唄を歌いながら洗い物を片付けた。

「あ! プロデューサー今日は仕事はダメだぞ!」

エプロンを脱いで戻ってきた響がPを見て声を上げる。

「いや……ちょっとだけ確認をな……」

「ちゃんと休まないとダメさー!」

傍らに膝を下ろしてPからケータイを取り上げようとする。




54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 22:12:01.75 ID:3X7azJ+i0
「すぐ終わるから、ちょっ」

「ダメだってば、わあっ!」

勢いあまった響はPを押し倒した。

「ご、ごめん。プロデューサー」

「あぁいや、だいじょうぶだ」

ケータイが転がる。

「響? どうした?」

「じ、自分、重くない?」

「え? いや、重くないぞ。響、ちっこいからなぁ」




59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 22:19:53.92 ID:3X7azJ+i0
「うがーっ! 自分、小さくないぞ!」

布団をはさんでPのうえに乗っかったまま、響はじたばたした。

「小さいだろ。響より背が低いのってやよいしかいないじゃないか」

「そ、そうだけど! あれは亜美真美が伸びすぎっていうか……」

Pはごにょごにょする響の頭を撫でた。

「いいじゃないか。小さくて、可愛いんだから、響は」

「ふあ、にゃでるなぁぁ……っ」

「それに、優しいよ。看病に来てくれたりするし」

「うにゅあぁ……」

響は喉を鳴らした。




61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 22:26:10.86 ID:3X7azJ+i0
「そ、その、プロデューサー?」

「なんだ?」

「自分が、来て、どうだった?」

「ん? 助かったし、嬉しかったよ」

「えっと、えっとね。だったら、その、ごほうびが欲しいなぁって……」

「あぁ、そんなことか。なんだ、何か欲しいのか?」

「えぇっと、……てほしい……」

「え?」

「きっキスしてほしい!」




64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 22:31:18.19 ID:3X7azJ+i0
「………」

「………」

「……えっと」

「だ、ダメ、か……?」

赤面している響は目を潤ませた。

「いや……、なんでそうなるんだ?」

「……へ?」

「どうしたんだ? 平気か? 響」

「………っ」

響は俯いてぷるぷると震えた。




66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 22:38:39.67 ID:3X7azJ+i0
「……も、もう」

「響?」

「プロデューサーのバカぁっ!」

跳ねるように響がPにくちづけた。
獣のように勢いよく、鳥がついばむように軽く。

「!」

驚いて逃げようとするPの頭を響が追いかける。
混乱しながら、あ、やっぱり柔らかいなぁ、とPはぼんやりと思った。

「ぷはっ、はぁっ、はぁっ、はぁ」




71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 22:47:19.85 ID:3X7azJ+i0
「………」

響は壁に向かって正座していた。

「お、おい響……」

「ほっといてほしいさー……」

「いや、あのだな」

「自分がどうかしてたさ……プロデューサーに嫌われても仕方ないぞ……」

「いや、嫌ってないけど」

「うそだ……だって、き、キスするのいやがったし……」

「違うんだって」




75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 22:55:43.20 ID:3X7azJ+i0
「誰だって戸惑うだろ、いきなり言われたら。間違えるなよ、いやだったわけじゃないんだ」

「……ほんと?」

響は振り返った。
涙目である。

「ほんとだよ。信じられないか?」

響は黙ったまま頷いた。

「しかたないな……」

Pは立ち上がって響に歩み寄り、膝をついた。
向き直った響のあごに手を掛けて、Pは顔を近づけた。

「ありがとな。響」

「えっ」

キス。




79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 23:02:19.23 ID:3X7azJ+i0
―――
――


「そういえば、響はどうやってウチまで来たんだ?」

二人でふとんに寝転がったまま、Pは訊いた。

「え? あぁ、事務所にいったらピヨ子が教えてくれた。プロデューサーさん風邪みたいだからお見舞いしてあげてーって」

「あのひとはまったく……」

ため息をつきながらPは響を撫でる手を止めない。

「自分は感謝しなきゃなー」

「ちなみに、どうしてだ?」

「だって、プロデューサーと仲良くなれたからな!」





おしまい




81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 23:04:06.99 ID:Z7LE4+2B0
乙さー



82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 23:04:08.87 ID:ROfOzfz30
乙~
響が幸せそうで何より




86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 23:05:14.85 ID:9MC8P41R0
おつん
ひびきはかわいい




93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/15(水) 23:21:31.97 ID:QKBWMg/5O
なんか響が主役のスレだと風の妖精ギップルが大量発生するこの現象はなんなんだろうか


超乙!!